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堀辰雄「恢復期」③詩篇

2026.06.29

【堀辰雄「恢復期」③詩篇】

1
わが神、わが神、
なにゆえわたしを
捨てられるのですか。
なにゆえ遠く離れて
わたしを助けず、
わたしの嘆きの言葉を
聞かれないのですか。

2
わが神よ、
わたしが昼よばわっても、
あなたは答えられず、
夜よばわっても平安を得ません。

3
しかしイスラエルの
賛美の上に座しておられるあなたは
聖なるおかたです。

4
われらの先祖たちは
あなたに信頼しました。
彼らが信頼したので、
あなたは彼らを助けられました。

5
彼らはあなたに呼ばわって救われ、
あなたに信頼して
恥をうけなかったのです。

6
しかし、わたしは虫であって、
人ではない。
人にそしられ、民に侮られる。

7
すべてわたしを見る者は、
わたしをあざ笑い、
くちびるを突き出し、
かしらを振り動かして言う、

8
「彼は主に身をゆだねた、
主に彼を助けさせよ。
主は彼を喜ばれるゆえ、
主に彼を救わせよ」と。

9
しかし、
あなたはわたしを生まれさせ、
母のふところに
わたしを安らかに守られた方です。

10
わたしは生まれた時から、
あなたにゆだねられました。
母の胎を出てからこのかた、
あなたはわたしの神で
いらせられました。

11
わたしを遠く
離れないでください。
悩みが近づき、
助ける者がないのです。

12
多くの雄牛はわたしを取り巻き、
バシャンの強い雄牛はわたしを囲み、

13
かき裂き、
ほえたけるししのように、
わたしにむかって口を開く。

14
わたしは水のように注ぎ出され、
わたしの骨はことごとくはずれ、
わたしの心臓は、
ろうのように、胸のうちで溶けた。

15
わたしの力は
陶器の破片のようにかわき、
わたしの舌はあごにつく。
あなたはわたしを
死のちりに伏させられる。

16
まことに、犬はわたしをめぐり、
悪を行う者の群れが
わたしを囲んで、
わたしの手と足を刺し貫いた。

17
わたしは自分の骨を
ことごとく数えることができる。
彼らは目をとめて、
わたしを見る。

18
彼らは互にわたしの衣服を分け、
わたしの着物をくじ引にする。

19
しかし主よ、
遠く離れないでください。
わが力よ、
速く来てわたしをお助けください。

20
わたしの魂をつるぎから、
わたしのいのちを
犬の力から助け出してください。

21
わたしをししの口から、
苦しむわが魂を
野牛の角から救い出してください。

22
わたしはあなたのみ名を
兄弟たちに告げ、
会衆の中で
あなたをほめたたえるでしょう。

・・・略・・・

(詩篇22篇より抜粋)

6月29日午前8時、
気温17.8℃、晴れ。

画像は
追分から望む、
冠雪した夕暮れの浅間山です。

引用文は、
旧約聖書の詩篇22篇。

「恢復期(かいふくき)」の主人公は
この詩篇22篇の17節を
「わが骨はことごとく
数うるばかりになりぬ」
とつぶやいたのです。

詩篇22篇の冒頭は、
イエス・キリストが
十字架上でつぶやいたことで
知られています。

この22篇全体が、
ゴルゴダでの出来事を
「予言」したものとされています。

それを
いかにも不信心な
主人公の「彼」の
口癖にさせながら
読者にはその真意を
考えさせるところが、
堀辰雄の小説家としての
構想力だと言えるでしょう。

撮影日20260424

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