【軽井沢ユニオン・チャーチと堀辰雄】
それから二三日の間、
私が夕方そこを
散歩のついでに通り過ぎると、
いつもきまつて同じ自轉車(自転車)が
置いてあつて、
會堂(会堂)の中からは
同じやうに低い
ヴァイオリンの音が洩(も)れてゐた。
私はその度に、
しばらく同じやうな恰好(かっこう)で
柵に凭(もた)れ、
同じやうな恰好で
それを聞きながら
パイプを吹かしてゐた。
或晩、
村の慈善音樂會がひらかれた。
その村に夏を過しにくる
人々の中で
毎年上手な素人の音樂家が
選ばれて演奏するのだつたが、
その晩、私ははじめて
毎日その自轉車だけ見てゐた
ヴァイオリンを彈く少女を
目のあたりに見た。
(堀辰雄「四葉の苜蓿(うまごやし)」より)
ー
6月13日午前8時、
気温は14.2℃、晴れ。
画像は、
軽井沢ユニオン・チャーチです。
堀辰雄は
この近くの宿に逗留したり
別荘を借りたりして、
執筆に励みました。
日頃からあちこちを
歩き回っていた
堀辰雄の文から、
この礼拝堂が
避暑客たちの
祈りと社交の中心だったことが
伝わってきます。












