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歯痛地蔵と辰雄忌

2026.05.13

【歯痛地蔵と辰雄忌】

その藁屋根(わらやね)の
古い寺の、
木ぶかい墓地へゆく
小径のかたわらに、
一体の小さな
苔蒸した石仏が、
笹むらのなかに何か
しおらしい姿で、
ちらちらと木洩れ日に光って
見えている。

いずれ観音像かなにかだろうし、
しおらしいなどとは
もってのほかだが、
――いかにもお粗末なもので、
石仏といっても、
ここいらにはざらにある
脆もろい焼石、
――顔も鼻のあたりが欠け、
天衣(てんね)などもすっかり磨滅し、
そのうえ苔がほとんど
半身を被ってしまっているのだ。

右手を頬にあてて、
頭を傾かしげている
その姿が
ちょっとおもしろい。

一種の思惟象(しゆいぞう)
とでもいうべき
様式なのだろうが、
そんなむずかしい言葉で
その姿を言いあらわすのは
すこしおかしい。

もうすこし、
何んといったらいいか、
無心な姿勢だ。

それを拝しながら過ぎる
村人たちだって、
彼等の日常生活のなかで
どうかした工合で
そういった姿勢を
していることも
あるかも知れないような、
親しい、なにげなさなのだ。

(堀辰雄「樹下」(大和路・信濃路)より)

5月10日午前8時、
気温は12.6℃、晴れです。

画像は、
中山道追分宿の
泉洞寺にある歯痛地蔵です。

恐らく如意輪観音かと
思われますが、
堀辰雄に愛された石仏として
知られています。

泉洞寺では
堀辰雄の命日に合わせ、
5月28日(木)13時半より
「堀辰雄第七十三回忌追善法要」
いわゆる「辰雄忌」が
営まれます。

法要の後は、
泉洞寺本堂で
堀辰雄と立原道造の
詩の朗読も行われます。

撮影日20260507

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