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芥川龍之介「軽井沢日記」②牛乳4合

2026.10.16

【芥川龍之介「軽井沢日記」②牛乳4合】

 八月四日。
晴。
堀辰雄来る。

暮に及んで白雨(はくう)あり。

犀星、辰雄と共に
軽井沢ホテルに赴き、
久しぶりに西洋風の晩餐を喫す。

客に独逸(ドイツ)人多し。

食堂の壁に仏画
両三幀(りょうさんちょう)を
掛(か)く。

電燈の光暗うして、
その何たるかを弁ずる能はず。

隣卓に禿頭(とくとう)の
独逸人あり。

卓上四合入の牛乳一罎(びん)を置き、
英字新聞に目を曝しつつ、
神色自若(しんしょくじじゃく)として
牛乳を飲み、
五分ならざるに一罎を尽す。

食後サロンに
閑談すること少時。

雨を侵(おか)して
鶴屋に帰る。

 夜半「僻見(へきけん)」
の稿を了(りょう)す。

(芥川龍之介「軽井沢日記」より)

⸻

画像は、
霧の雲場池です。

ところで芥川龍之介の
軽井沢日記は、
やや難解な語句がいくつもあります。

白雨とは、
雨足で辺りが真っ白に見えるほどの
激しい夏の夕立ち。

仏画両三幀とは、
二、三枚の
フランス絵画でしょうか。

最初は如来や菩薩やを描いた
仏画かと思いましたが、
ホテルの壁なので
印象派の風景画かもしれません。

神色自若とは、
精神と顔色が
泰然自若としている様。

「僻見」は
芥川の随筆作品です。

しかし芥川、犀星ともに
この牛乳大量消費のドイツ人には
真底驚かされたようです。

5分で4合の牛乳など
聞いているだけで
お腹を壊しそうな気がしますが、
やはり胃腸の働きが
日本人とは違うのだなと
思わされます。

ここには書かれていませんが、
横で見ていた堀辰雄も
さぞかし驚いたことでしょう。

ちなみに堀辰雄は、
前年の関東大震災で
母を失っています。

芥川と犀星の2人は
どことなく寂しげな堀に対し、
「頼れる大人」となって
元気づけたいという気持ちも
あったかもしれません。

撮影日20260523
投稿日20261016

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