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片山廣子「翡翠」⑦みやまどり

2026.10.08

【片山廣子「翡翠」⑦みやまどり】

日ごろ我が思はぬ人もいと戀し
日の入りあひにみやまどり鳴く

(片山廣子「翡翠(かわせみ) 
輕井澤にてよみける歌十四首」より)

⸻

画像は、
追分宿の追分公園です。

ところでこの歌は
夕暮れに鳴く
「みやまどり」の声を聞くと、
日頃の思い出さない人も
恋しく思われるという歌です。

1878年(明治11年)生まれの
片山廣子は、
1899年(明治32年)21歳のときに
7歳年上で
新潟県出身の
片山貞治郎と結婚しました。

大蔵省を経て
日本銀行理事となった夫が
新潟に帰省する際、
廣子は同行して
その道中にある軽井沢に
滞在したのではないかと思います。

しかし廣子は
夏の間じゅう
軽井沢で過ごすことができても、
多忙な夫は早々に
東京に戻らなければ
ならなかったでしょう。

夫を送り出し
ひとりとなったときに、
詠んだ歌なのではないかと
筆者は想像します。

⸻

ところで、
「みやまどり」とは
何の鳥でしょう。

歌語(かご)では単に、
「深山にすむ鳥」を指しています。

一方
ミヤマホオジロを指す
との説もありますが、
ミヤマホオジロは冬鳥なので
廣子がその声を聞いたとは思えません。
(しかも、囀るのは春です)

昼は一緒にいても
夜になると夫婦が別々に寝る
と考えられていた
ヤマドリの可能性もありますが、
ヤマドリは
▼地上で羽ばたいてドドドと音を出す
「母衣(ほろ)打ち」と
▼ググググという
地鳴きしかしません。

「ケーン」と高らかに鳴く
キジも情緒がありますが、
「深山の鳥」という
イメージではありません。

カッコウやホトトギス、
ツツドリ、ジュウイチといった
杜鵑類(とけんるい)はよく声が通り
特にホトトギスは
夕暮れにも鳴きますが、
ホトトギスなら
その名を書くでしょう。

となると
クロツグミ、キビタキ、コルリ、
サンコウチョウ、オオルリ、アオバト、
また夜に
「仏法僧(ぶっぽつそう)」と鳴く
コノハズクと
候補はいくらでもありますが、
判断の決め手に欠けます。

もしかすると
森の奥から響く
何か珍しい鳥の声を耳にした
片山廣子は、
その鳥が何であるかは
分からないけれども
夫婦の夜の別れを意味する
ヤマドリを連想した⸻
ということかもしれません。

撮影日20251021
投稿日20261008

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