【片山廣子「翡翠」⑦みやまどり】
日ごろ我が思はぬ人もいと戀し
日の入りあひにみやまどり鳴く
(片山廣子「翡翠(かわせみ)
輕井澤にてよみける歌十四首」より)
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画像は、
追分宿の追分公園です。
ところでこの歌は
夕暮れに鳴く
「みやまどり」の声を聞くと、
日頃の思い出さない人も
恋しく思われるという歌です。
1878年(明治11年)生まれの
片山廣子は、
1899年(明治32年)21歳のときに
7歳年上で
新潟県出身の
片山貞治郎と結婚しました。
大蔵省を経て
日本銀行理事となった夫が
新潟に帰省する際、
廣子は同行して
その道中にある軽井沢に
滞在したのではないかと思います。
しかし廣子は
夏の間じゅう
軽井沢で過ごすことができても、
多忙な夫は早々に
東京に戻らなければ
ならなかったでしょう。
夫を送り出し
ひとりとなったときに、
詠んだ歌なのではないかと
筆者は想像します。
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ところで、
「みやまどり」とは
何の鳥でしょう。
歌語(かご)では単に、
「深山にすむ鳥」を指しています。
一方
ミヤマホオジロを指す
との説もありますが、
ミヤマホオジロは冬鳥なので
廣子がその声を聞いたとは思えません。
(しかも、囀るのは春です)
昼は一緒にいても
夜になると夫婦が別々に寝る
と考えられていた
ヤマドリの可能性もありますが、
ヤマドリは
▼地上で羽ばたいてドドドと音を出す
「母衣(ほろ)打ち」と
▼ググググという
地鳴きしかしません。
「ケーン」と高らかに鳴く
キジも情緒がありますが、
「深山の鳥」という
イメージではありません。
カッコウやホトトギス、
ツツドリ、ジュウイチといった
杜鵑類(とけんるい)はよく声が通り
特にホトトギスは
夕暮れにも鳴きますが、
ホトトギスなら
その名を書くでしょう。
となると
クロツグミ、キビタキ、コルリ、
サンコウチョウ、オオルリ、アオバト、
また夜に
「仏法僧(ぶっぽつそう)」と鳴く
コノハズクと
候補はいくらでもありますが、
判断の決め手に欠けます。
もしかすると
森の奥から響く
何か珍しい鳥の声を耳にした
片山廣子は、
その鳥が何であるかは
分からないけれども
夫婦の夜の別れを意味する
ヤマドリを連想した⸻
ということかもしれません。










