【片山廣子「翡翠」④堀辰雄「物語の女」での山羊の描写】
山羊の子は流のふちの桑の葉も
はみ飽きたるか我により來る
(片山廣子「翡翠(かわせみ) 輕井澤にてよみける歌十四首」より)
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画像は、
旧軽井沢の水源地の道です。
ところで昨日ご紹介した
片山廣子のこの歌を元にした描写が
堀辰雄の「物語の女」
の中にはありますので、
以下に抜粋します。
堀辰雄にとって片山廣子は
26歳の離れた
母親のような存在ですが、
「片山廣子の世界」を
堀辰雄も
深く愛していた
ということがよく分かります。
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私は漸(や)っと、
数本の、
大きな楡(にれ)の木のある、
杉皮葺(すぎかわぶき)の山小屋を、
五六百坪の地所ぐるみ
手に入れることが出来た。
風雨にさらされて、
見かけはかなり傷んでいたけれど、
小屋のなかはまだ新しくて、
思ったより住み心地がよかった。
子供たちが退屈しはしないかと
それだけが心配だったが、
むしろそんな山の中では
すべてのものが珍らしいと見え、
いろんな花だの昆虫などを採っては
大人しく遊んでいた。
霧のなかで、
うぐいすだの、
山鳩だのがしきりなしに啼(な)いた。
私が名前を知らない小鳥も、
私たちがその名前を知りたがるような
美しい啼き声で囀(さえず)った。
流れのふちで
桑の葉などを食べていた山羊の仔も、
私たちの姿を見ると
人なつこそうに近よってきた。
そういう仔山羊とじゃれあっている
お前たちを見ていると、
私のうちには悲しみとも
なんともつかないような気もちが
こみ上げてくるのだった。
しかしその悲しみに似たものは、
その頃私には
殆んど快いほどのものに、
それなくしては私の生活は
全く空虚になるだろうと
思えるほどのものに
なってしまっていた。
(堀辰雄「物語の女」より)












