【片山廣子「翡翠」②花鳥と森と人と】
花草の信濃たか原あさ行けば
人の世遠くみそらのちかき
霧ふかしうぐひすむせぶ雜木原
とつくに人に路とひにけり
(片山廣子「翡翠(かわせみ)
輕井澤にてよみける歌十四首」より)
ー
画像は、
浅間山麓のグンナイフウロです。
ところで今日の歌も、
片山廣子の
素直な気持ちを表しています。
一首目は、
花咲く清々しい高原の朝。
浮世を離れ、
空を近く感じると歌っています。
ただし
ミッションスクールである
東洋英和女学校卒の片山は、
空を敢えて
「みそら(御空)」と呼んでいます。
彼女はその言葉に、
「神の臨在」の気配を
込めたのではないかと
筆者は思います。
心身が清められ、
感動に心が震えた瞬間を
歌ったのだと想像します。
ー
二首目は
鶯がむせび鳴く霧の雑木林の中で、
「とつくに人」
すなわち外国人に
道を尋ねたという歌です。
高原や山地の森では、
夏でも鶯が鳴きます。
その艶やかな声が響き渡る
霧の森の小径で、
片山は英語で問いかけたのでしょう。
問われた相手は、
歩き慣れた格好をした
若い外国人男性でしょうか。
日本人女性に
流暢な英語で
話しかけられたことへの
ちょっとした驚きと
「森歩き」の仲間意識により、
この外国人が笑みをもって
答えてくれた情景が
目に浮かびます。
束の間の、
心温まる交流。
森と鳥と人を
ことほぐような、
美しい歌です。
ー
ちなみに
片山廣子の父 吉田二郎は
ニューヨーク総領事などを務めた
外交官で、
廣子自身は渡航経験は無くても
幼少時から西洋文化に親しみ、
英語は5歳のときから
学んでいたそうです。
東京帝国大学英文科卒の
芥川龍之介と、
話が合わないはずがありません。











