工房の想いがこめられた
エルツの小さなおもちゃたち
エルツの小さなおもちゃたち
ドイツ・エルツ地方は、木のおもちゃ作りで世界的に有名な地域です。
「おもちゃの町」として名高いザイフェンをはじめ、オルベルハウやドイチョイドルフなど、木のおもちゃ作りを営む地域が多くあります。
エルツ地方は、かつては鉱業で栄えた地域でした。
しかし、17世紀になって鉱業が衰退すると、それまで副業的に行っていた木工品作りを本格的に行うようになります。
現在、エルツ地方・ザイフェンには、約150のおもちゃ工房が存在し、個性豊かな木のおもちゃを生産しています。
エルツ地方のおもちゃ工房では、「くるみ割り人形」や「パイプ人形」といった伝統的なおもちゃの他に、多彩なミニチュアも制作されています。
例えば、ライヒセンリンク工房では、春にぴったりな「花」のミニチュアが制作されています。
ライヒセンリンク工房は、1904年にエミール・ライヒセンリンクが創業した工房です。
エミールは、当時流行していた自動車のミニチュアを制作し、工房を軌道に乗せました。
その息子エーリッヒが工房を継ぐと、より親しみのある「生誕」や「イースター」などのミニチュア制作を始めます。
現在、工房の看板商品にもなっている「花」のミニチュアも、エーリッヒによって生み出されたものです。
この「花」のミニチュアを孫娘のギッタがさらに発展させています。
ライヒセンリンク工房では、親子で作品を受け継ぎ、守りながら、さらに発展させ現在まで伝えています。
1933年に創業のエミール・ヘルビッヒ工房は、木彫りのミニチュア制作が特徴的です。
グリム童話や動物、絵画など、モチーフは多岐にわたります。
作品は全て手彫りで行われており、動物の筋肉なども巧みに表現され、今にも動きだしそうな印象をうけます。
ヘルビッヒ工房が大切にしている「手彫りにしかできない表現をする」という理念が、ミニチュアから伝わってきます。
本展では、エルツ地方のおもちゃのなかでも、ミニチュアを中心に展示します。
エルツ地方のミニチュアは、1つ1つ手作業で作られています。
そのため、制作にたくさんの時間がかかります。
そんなミニチュアが現在まで伝わっているのは、工房の職人たちが代々、作品や技術を大切に守ってきたからでしょう。
小さなミニチュアのなかには、工房の想いやこだわりが込められています。
ミニチュアがつくる世界を楽しみながら、エルツ地方のおもちゃ工房を知る機会になれば幸いです。